about
箱底に震える蜘蛛を捕まえた。繋がったリードは通天の威容があった。夕映えは奔放な名字に感情を与えた。
雑草を掻き分け、畦道を渡り、深いトンネルを潜り抜けた。全身に「引っ付き虫」が張り付いていた。放課後には、いつも汚れた身だけがあった。ダム湖と祭しかない田園。初夏の風に稲穂の先が揺れた。貨物ターミナルに続く十数の路線を徒渉する中学生達は、いじめによって人が死んだ学校へ通学していた。無人直売所に、壊れた監視カメラがあった。私はここで生きていくものだと思っていた。
多摩川に架かる様々な橋を、渡ったり渡らなかったりしながら、暮れなずむ時間を過ごした。河川敷に打ち上がる硬球は、ラブホテルのネオンに切創を与えた。教室の窓から飛び出した紙飛行機は、中庭の自販機の裏側に着陸した。濡れ始めたソファは、いつの日か太腿を草冠で繋げた。誰もいない玉川通りを制服で上る夢をみた。放棄された箱庭がゴミ箱を満たした。孤立した鉄塔は、深い闇を作った。欄干越しに眺めた太陽は、水平線を超えて落ちていった。
冷え切った喉奥に、冷えすぎた副菜であった。新幹線改札前で両耳は反抗期を迎えた。港に向かって自由通路を歩く我々は、地底を飛行するエクラノプランであった。薬臭の漂う終末処理場のプールに、頭と腕を欠いた女神が流れ着いた。沈黙のサリッサは世紀を渡り、いつしかマケイン業界に辿り着いた。帰り道、オアゾの丸善に立ち寄る。一階を足早に抜けた。夕靄が立ち、潮の香りがした。
梅雨寒の窓辺。午後七時。それは、誰に対する諒恕か。それは、誰に対する愛撫か。地元の町中華。いつも頼むのは麻婆豆腐であった。藤椒と腐乳のまろやかな痺れが口腔に広がる。近代から落っこちた感傷が歯間を通過する。こんな、口元も緩んじゃってさ。涎も垂れちゃったね、笑